戦争は終わった。

 軍事工場は閉鎖され、それと同時に女子供達も解放された。我が子を抱きしめ、幸せを噛みしめる姿があちこちに見られる。しかし喜びもつかの間、彼女達はこれからどうしようかと、しばらく途方にくれた。

 雲は天高くたなびき、流れ往くのは風ばかりではない。この哀れな流民達もまたいずこへ流れようかと思案している。

 しばらくそうしていると、同じ工場で働いていたシェイン族の老人達が集まり、なにやら話し合っていた。どうやら自分と同じ民族が住める自治区があるらしい。まだ名前も決まってないが、仲間達がそこに集まっているかも知れない。そこに行けば戦地に行っていた者達に会える可能性があるかも……、と。

 そういった話し声が道端にある大きめの石に腰掛けた女の耳にも入った。そうしてその女は赤ん坊を背負い、片方の手で荷物を持つと、小さな幼子の手を取って彼の地へと歩き出した。

 彼女の出で立ちは次のようなものだ。

 年の頃は二十代後半といったところだろう。銀色の犬耳をしており、寒さから守るためにそれを隠そうと帽子を被っている。腰の下まで垂れた長い髪は吹く風で乱れ、塵埃(じんあい)に塗れたせいでくすんではいるが、犬耳と同じ銀色をしている。