不幸中の幸いと言うべきか、この気運は瞬く間に世界にひろがり、多くの国が賛同し、支援してくれた。

 国の大きさ、国境、地理、気候、環境、通貨、教育、文化、言語、外交、内政と多種多様に問題は山積されていたが、シェイン族とそれを支援する国は一つ一つ根気よく解決していった。

 もちろん各国の利益、損得勘定は少なからずあったが、絡まった紐をほぐしていくように、妥協して、和解して、解決していったのだ。

 だが悲しいかな、全ての人間がシェイン族を認めたわけではない。

 今まで奴隷としてしか見てなかったものが急に自分達と同じ権利、自由を手にいれたことを受け入れず、差別するものが居たのだから。この人種差別という問題は二百年経った今でも戦後ほど酷くはないが根深く残っている。

 前置きはこのくらいにして、そろそろ話を始めるとしよう。

 物語は今から二百年前、百年戦争終結前後にまで遡る。まず、私はこの一人の母親の生い立ちから記していきたい。