…それから私達はチャイム…予鈴が鳴ったので、各クラスに戻った。
戻る途中、
『ねぇ、白蕗さん』
『はい』
『…私、渉【わたる】が好きなんです』
『…ワタル?』
私がわからずにいると、
『…あぁ、海堂先生のことです』
『あぁ…』
雛鞠さんは教えてくれた。
―――海堂 渉って言うんだ。
初めて知ったな。
何だか、作家のペンネームみたい。
『…でもね?
私は好きなんですけど、向こうは私のことなんて、ただのイトコにしか見ていないんです』
『…そんなこと…』
『…まぁ、“そうしてくれてる”ってニュアンスの方が合っているのだろうけれど』