私は、彼を尊敬する。
彼は、ただの経験豊富な人じゃなかった。
ただの、御曹司じゃなかった。
…偉大な人は私じゃない。
―――彼だよ。
「…私の名前、まだ言ってなかったよね」
「え…」
「相澤 雛鞠、高校1年生です。
白蕗 更紗様、目上の方に敬語もなしにお話したこと、申し訳ありませんでした。
先程のご無礼をお許しください」
「―――え?」
雛鞠さんは、いきなり人が変わったようだった。
雰囲気から何から何まで、ガラリと一変した。
「…―――これが“表”の雛鞠だよ」
「…え…?」
「相澤本家であろうが、なかろうが自分を表では偽らなければならない」
「…」
「それは、白蕗家でも一緒のはずだ。
…日々プレッシャーの中でみな、戦っている」
それはどこでも変わらないんだよ、と海堂先生は言う。
…そう、わかっている。
プレッシャーの中で生きていかなければならない。
それは、誰にだってあるんだから。
みんなそれぞれのプレッシャーがある。
親からのプレッシャー
先生からのプレッシャー
友達からのプレッシャー
社会からのプレッシャー
いろんなプレッシャーに押し潰されそうになりながらも、必死に高みをめざして頑張っている。


