「……頼もしいですね、更紗」
「…」
「……わたくしも、お見合い結婚でね。
わたくしは実篤に一目ぼれでした。
けれど実篤が好きだったのは、愛していたのは“ヨシノ”」
「…え…」
「あのソメイヨシノを植えていたのは、“ヨシノ”さんが好きだったから。
……その“ヨシノ”さんは、わたくしの親友…」
……お祖母様…。
私はまだ“好き”という感情が分からないけれど。
好きな人に、
愛している人に、
自分の他に好きな人がいるっていうことは、
――――ものすごく苦しくて、悲しくて、つらいことだと思う。
……お祖母様の人生は本当、前途多難で辛いことばかりだと思う。
けれど、それに立ち向かっていっているお祖母様がかっこいいと思うし、
誰よりも尊敬する。
けど。


