それから何ヵ月か後に亡くなったのだ。
―――それからだった。
お祖母様が変わったのは。
『更紗、もうお花摘みはいいのですか?』
『はいっ!見てお祖母様!
こんなに綺麗なマーガレットがいっぱい咲いていました!』
『あら、本当。綺麗ね』
こんなに優しかったお祖母様が、
『拓哉。
あなたは本家に移動して貰います』
『え…っ』
『拒否権はありません。
さぁ、荷物を纏【まと】めなさい』
『ちょ…っ待ってください!
お祖母様!!』
『…更紗、あなたももう甘えていては駄目です。
そんなのでは“白蕗家”の名を名乗ることは許しませんよ』
…あんなにも頑なな心で、冷たくなったのは。
でも、優しさは消えていなくて。
…お祖母様。
辛かったんでしょう…?
お祖父様が残されたこの白蕗家を守るために、
後世へ繋ぐために、
悲しくても、
辛くても、
泣きたくても、
心を鬼にしていたのですね。


