「…っ」 「更紗ちゃん?」 「あ…」 遥翔に、拒否されることが。 それが、一番怖くて。 逃げる唯一の理由だ。 「ねぇ、梓紗ちゃん?あれは梓紗ちゃんのお父様?」 私がそう聞くと、 「あー!おとーさま!」 梓紗ちゃんは大きな声で、マリナの旦那さん―――三条さんの元に走って行った。 「梓紗、ただいま」 「おかえりー!」 ヤバい。 非常にヤバい、この状況。 どうすればいいの。 そう考えている間に、 「…梓紗、マリナに香水付けてもらったのか?」 「ううん」 そんな声がした。