「…そうか」
「っ、『そうか』しか言ってくれないの?!」
「…じゃあ『おめでとう』とでも言ったほうがいいのか?」
「…っもういいっ」
私は渉から「さよなら」をしなければならない。
私は走って出て行った。
行き先は、屋上。
チャイムが鳴ったのだって、気にしない。
「やっぱり、無理なんだよね…。
私と渉が一緒になることなんて…」
前に、更紗さんに言ったことがある。
『同じような家柄、世界に生を受けた故【ゆえ】に、私達はきっと同じような末路を辿る』
―――それが例え、好きな人とであろうが、
…何も知らない水知らずの人であろうが。
無力な私たちは親のいいなりにしかなれないのだから。


