「遥翔…っ、遥翔、遥翔…っ!!」
必死で遥翔の名前を呼んだ。
必死で、必死に。
まるでもう、二度と会えないかのように。
私は遥翔に『離さない』と言うかのようにきつく、きつく抱きついた。
「…どうか、したのか?更紗」
こんな優柔不断な私に遥翔は優しく問いかけてくれる。
『そんなに優しくしないで』って。
思わず言いそうになる。
だって、私は遥翔のこと、信じられなかったんだよ?
なのに、私はこんなに遥翔に優しくなんてしてもらえない。
してもらったら、いけない。
―――そうは思っているのに、この優しさに甘えてしまう私自身が嫌い。
この優しさは、私だけのものだと思ってしまっている私が嫌。
…この優しさを知ってしまったら、
きっと私はもう本当に離れられなくなっちゃうよ。
「…っ、また…っ」
「…ん?」
「また…っ、私は…っ」
言ってしまったら最後かもしれない。
『お前は最悪』と言われてしまうかもしれない。
もう、
―――優しくなんて、してくれないかもしれない。
だけど。
もう、逃げるのはやめにしたから。


