「…別に、更紗はそのままでいいんだけどな」 彼女が走り去って行ったほうを見つめる遥翔。 まるで小鳥が巣立っていくのを見守る親のように、 ―――――儚く、切なそうに。 「…遥翔様」 「…いや、いいんだ。 …俺に、安全な鳥籠の中に彼女は閉じ込めて置かれるつもりはないようだ。 …彼女の意志の強さには感服するよ」 「…そうですね」 …そう呟いていたことを、私は知らない。