温厚なあの兄様が。 こんな、一目瞭然に。 それが珍しくて珍しくて、私は仕方がない。 ―――すると、 「どうか、された―――」 「黙ってろって言ってるだろう、更紗」 私の方へは向かず、ずっと遥翔を睨み続ける兄様。 …もう、私には止められないみたいだ。 私は黙って見守ることにした。 兄様が遥翔に危害を加えるなんて思わないし、きっと何かがあってのことなのだと。 そう思ったから。