遥翔の顔を見ることができなくて、 それ以上に、 なぜか私自身が悲しみに暮れている。 理由なんてわからない。 けど。 悲しくて、泣きたくて、堪らない。 「…っ、帰ります」 私は遥翔の顔を見ずにそう言うと、無我夢中で走った。 人混みの中を必死で走った。 「……――――っ、更紗!!」 遥翔が私を呼ぶ声も聞こえないくらいに。 この悲しみの原因は、 この苛立ちの理由は、 ――――――一体、何なの―――…?