「更紗…」
「私は“長女”であっても、“跡取り”ではないから」
跡取りじゃないから、これだけ自由にさせてもらえた。
兄様のように跡取りという、錘【おもり】がついていたら、今のような生活は送れなかった。
「…兄様、私は卑怯だと思う」
「…」
「兄様の後に生まれてきて、こんなにも自由にのうのうと生きてきた。
…兄様に守られて」
「…」
「兄様には本当に感謝してるの。だからね」
「…更紗」
「これからは、兄様に頼らず生きてみようと思うの」
兄様は本当に優しい人だ。
普通なら、私のことを怨んでいてもおかしくはないのに。
なのに怨むどころか、
自分のことは後回しで、私のことを考えてくれて。
でも、その優しさにいつまでも頼っていてはダメだよね。


