「じゃ、行こうか」 彼は再びそう言い、私の手を自然に取った。 「…っ」 「…いいだろ?手くらい繋いだって」 確認するかのように彼は私に聞く。 …“手くらい”って。 私には“手くらい”じゃないんだよ? 手を繋ぐことだって、私は初めてなんだから。 恥ずかしいし、緊張するのに。 けど、それ以上私も経験がないかのように言うのはなぜか嫌だったので、 「…いいよっ。それくらい…」 強がって、手を繋ぐことを許した。 彼が、そのことに気付いていたかいなかったのかは知らない。