不覚にも私は彼に“更紗”と呼ばれるのが嫌じゃない。
…寧ろ、好きだ。
…どうしたんだろう。
本当に、おかしいよ私は。
…このことで麻痺していたのか私は、
「…はる、と……」
彼の名を無意識に呼んでいた。
…いや、無意識じゃない。
脳が口元に司令する前に、口が、勝手に言っていた。
「…もう一度」
「……遥翔」
私がもう一度名前を呼ぶと、
なぜだか柔らかく笑って、
「…よろしい。よくできました」
そう言って、私の頭を撫でた。
…その撫でてくれている手が暖かくて、その感覚が好きだった。
…優しく、嬉しい気持ちにさせた。


