恋する! マトリョーシカ



「何それ?
 なんかすっげぇ気分悪ぃわ。
 ああなんかムカムカしてきた。
 ついでにムラムラしてきた」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 思わず甲高い声を上げて、再び布団の中へ潜り込んだ。


「お前なぁ、どんだけ失礼なんだよ?
 マジ腹立つわ」

 そう言いながらも、先輩の声は穏やかで優しい。

 怒っていないのかな。
 どうかな。
 布団の中では先輩の顔が見えないからわからないです。


「人を犬畜生みてぇに。
 俺はそんな節操のない男じゃねぇわ。
 ま、女に不自由はしてっけどな」

 恐る恐る再び布団から出てみれば、先輩は自嘲するような苦笑を浮かべていた。


「不自由って……
 先輩にはあんなにも美しい彼女がいるじゃないですか」

「ああ、俺ら付き合ってねぇよ」

 ヘラヘラと笑いながら何でもないことのように言う。