とぼとぼ街の中を歩く。

当然耳が聞こえないから、
話しかけられても答えられない。


 「あれ、あなたみたいな小さな女の子がどうしてここに?」

女の人があたしに話しかける。

でも、聞こえないあたしはそのまま進む。


何かに気付いたのか、その女の人は
「ふぅー」と吐いて肩を軽く叩いた。


――ポン、ポン

まるで赤ちゃんを寝かせる母親の手のよう。
そう思えるぐらいに優しくて暖かかった。


そして振り返るあたし。


 「もしかして、耳が聞こえないの?」

そう話しながら手話をする女の人。

 「(はい、小さいころから全く聞こえません)」

あたしも答える。

 「そう、どうしてこんなところに?」

答えに戸惑う。

すると、何かを察したのか、

「そうね、場所を変えましょうか」

そう言うと「こっち」と手招きをした。
あたしはその女の人について行った。