彼は明るいし、ムードメーカーとしても存在がある。しかも、演技も上手い。誰も彼のできあがった演技には何もいえない。
「莉真ちゃん。もう、今日は帰っていいみたい。車だすから」
「由美さんっ。ありがとう」
マネージャーの斉藤由美さん。
ショートヘアーの頼れるお姉さんだ。
「ヒロインどうなるの?」
車に乗りながら、運転している最中の由美さんに聞いた。
由美さんは唸るような声を出して、
「なんか、オーディションになるかもって。第一条件は目を合わせても倒れないことかしら」
なんとなく笑いたいのに笑えない。これが続いたらいつになっても出来上がらないもの。
「また連絡するわ。お疲れ様」
由美さんと別れ、家に入った。
すると鳴る携帯。誰からと思って、名前をみて、たぶん。顔が歪んだかもしれない。
出るかどうか悩みながら、
階段を上った。
「でるの、遅くない?」
切れた電話と、声が同時に思えた。後ろを振り向き、さらに歪んでいく。
「なんでいるの?」
「現場じゃ話さないし。話したいんだから、仕方ないよ」
人をばったばった倒す瞳を持ってる彼が玄関に携帯を片手にたっていた。
