「あれ、かわいいこと出来るんじゃん。いつもそうやって愛嬌ふりまいていれば良いことあるよ」


彼は糸目になって嬉しそうに言うと、

私の頭を優しく撫でてくれました。


その大きな手の平から染み渡ってくる彼のぬくもりが、

私の全身を温風のベールのように包んでくれました。

そのおかげで、
私も優しい気持ちになれました。


この時は、

心の底から幸せを噛み締めていました。


生まれて初めて、

心の中で「幸せ」という言葉が浮かんだ瞬間でした。



誰かが隣に居てくれる幸せ、


誰かが与えてくれる幸せ。



これまで誰かに頼りたいとか、

誰かと一緒にいたいとか、

その「欲」は必死で抑えてきました。


だけどそれを持つことは
悪いことじゃないし、
醜いことじゃない。


むしろ素敵なことのように思いました。