名も無き恋【短編】

周囲を新しい気持ちで吸収している最中、

とある歩道を歩いていたときです。


道の隅っこに花を見つけました。


申し訳なさそうに、

けれど生きるためにまっすぐ

天の方へ背伸びする白い花。


名前はわかりませんが、

六枚の大きな花弁を着飾った、

そこいらの果物よりも甘い香りのする花でした。


―きれいなお花…



その瞬間、

即座にあの人の顔が浮かびました。


きれいなものを見て、

心のきれいな人を連想したのでしょうか。


あの人に似たこの花を、

ぜひあの人に見せたくなりました。


日頃のありがとうの気持ちをこめて、

贈り物にしようと思いました。