名も無き恋【短編】

3月初旬のある晴れた日、

私は久しぶりにこのオンボロ公園の外を散歩しました。


今の居場所は

あの人が来ることはもちろん、

人気がなくて
静かで心地良いので、

なかなか出たいと思えませんでした。


けれど、

あの人から桜のつぼみを見つけた話や

近くに噴水の公園ができた話を聞いて、

色々見てみたい、と外へ飛び出すことに思いを募らせていたのです。



久しぶりの外界はきもち新鮮でした。

人工的で冷淡な建物や、

粗悪な大気が漂う喧騒の町並みさえも。


あの人が嬉しそうに話していた
春色ピンクをした桜のつぼみも見ることができました。


まだ弱々しい太陽光線を浴びながらも

水が生き生きと輝いている公園の噴水も見ることができました。



―たのしいなぁ…



久しぶりに

いえ、初めてだったかもしれません。

こんな気持ちは…。