名も無き恋【短編】

そんな喜びの気持ちで一杯だったけれど、

口に出すことが出来ませんでした。


どんなタイミングで、

どんな風に言えばいいのか

全く解らなかったからです。


心の中で頭を下げながら、

半分のパンを一口一口しっかりと噛み締めて味わっていると、

私のが半分もなくならないうちに彼は食べ終えていました。



「うまいだろ?ゆっくり食え、な。また来るよ」



それからというもの、

彼はほぼ毎日私に会いに来てくれるようになりました。


黒い学ラン姿
プラス黒い大きなカバン

の固定スタイルに、

ある時はジャムパンを持って、

またある時はメロンパンを持って。


そして

何気無い学校での日常を話して帰ってゆくのです。


どうやらこの公園が通学路のようです。