名も無き恋【短編】

「待って、パンがあるんだぁ。一緒に食おうよ」


その言葉と、
カバンから取り出して目の前でちらつかせるアンパンが私の本能に届いた瞬間、

皮肉にも体はピタリと止まりました。


正直、空腹でした。



「おいで。購買でおやつ用に買ったんだけど、お前にもやるよ」



そう言って半分割ってくれたアンパンの味は、今まで食べた中でも格別のものでした。


彼の温かみが詰まった、
幸せの味。



うれしい、ありがとう。