僕以外にも夜のアーケードの住人がいる。

やけに古びたギターを手に大声で歌うアイツ。

毎日声が枯れるまで愛や恋を歌っている。

特別上手いとは思わなかったけれど、必死に訴え続けるその姿にはナゼか共感できた。

そしてショーウインドーに映る自分を見つめながら踊る、彼。

身のこなしや雰囲気から女性にも似た優しさが漂う彼から、僕は不思議な魅力を感じていた。

ダンスの事なんてさっぱりわからなかったけれど、一心不乱に踊る彼に僕は時折目を奪われた。

僕たちは微妙な距離を保ちながらいつも同じ場所で「自分」を表現した。

日が暮れるとこの場所にきて、大声で歌うアイツの声を聞きながらしなやかに舞う彼を横目に、売れるあてのない絵を描く。

気がつけばいつも同じだった。