「あの、例のあれは」

「ごめん、今、ちょっと」

「えっ?」


続きを、決定的な続きを言われる前に遮る

今はとてもさっき聞いて知った事実を言う気にはなれない

それはずばりそのまま言ってしまっていいのかって躊躇いもあるけど、それ以上に


「一人にしてくれないかな」

「…なにそれ」


おかしな話だ。ついこの前まで妹が自分を無視すると寂しがってたくせに、向こうから来てくれた今、理由はどうあれ歩み寄ってくれてるのに突き放す

「どんな感じかって言っただけなのに。聞けなかったならそう言えばいいじゃん。そうでしょ?」

さくらも思わず感情が高ぶったのか言い返す


妹なのにこんな風に会話を交わすことさえできなかった。それなのになんて、贅沢な、何が一人にしてくれだよ、図々しい

「……ごめん、」


ついこの間までは思っただろう。でも、今このモヤモヤを抱えたまま伝えても投げやりにぶちまけてしまいそうだから

こんないかにも自分を正当化してる風が嫌だ。だけど、もう少し待ってほしい


ごめんと、もう一度断って部屋に入る。さくらの方をちらっと見ると何か言いたそうにしていたけど、止められはしなかった


ドアに背をつけてため息をつく。前よりは明るくなってきても電気をつけてない室内は暗くて、でもその暗さが逆に落ち着く


それほど混乱する頭の中、疑問符が飛び交う




……何で、なんだ



「何が”疲れた”んだよ、黒翼…」


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