「おはよう、ございます…」

「お、おはよう、橋本くん」

棚で雑誌の整理をしていると挨拶に来た橋本くんは、二日前よりぎこちない気がする。あの日、バイト中に言った意味はあるのか。はたまた疎ましく思われただけなのか

「あっ、」

レジに戻ろうとする橋本くんを呼び止めた

つい掛けてしまっただけだけど、振り返るその表情にこれといった嫌悪は感じなかった

だから、だろうか


「なんすか?」

聞いてしまいそうになったんだ。彼女の有無を。まさか、このタイミングで、だ


「…ううん。ごめん。何でもない。今日もよろしくね」

「……はぁ」


何かを感じ取りながらも敢えて関わろうとはしないで、今度こそレジへと進んでいった


間もなく会計をしに来たお客様が橋本くんの前にかごを差し出す。いつも通りのバーコード打ちから金銭作業、商品渡しまで済まし、一礼。笑顔がなかったのは残念だったけど、お客様の目を見て接客していた

……よかった

それじゃあ甘いと指摘されそうだけど、橋本くんはやれば出来る子だから


でも、と思ったのは


いつも無表情の彼。俺が恋愛話を持ち出したら、一体どんな顔をするんだろうか、ということ


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