「なに?」

「今、お兄ちゃんと夕飯食べてるんだけど、さくらも食べるでしょ」

「要らない」

「…あら、そう。せっかくエビフライ作ったんだけどね……」


きっぱりとした口調で返されて、肩を竦めながら席へ戻る


最近はずっとこの調子だから、母さんも諦めているのかもしれない


それが時の流れ、変化、そういうことなんだ


ドタドタとついさっき聞いたような音が耳に届くまでそう思ってた


しっかりと閉めきってなかったドアがバタンッと開かれる



「おかずがエビフライなら早く言ってよ」

そんな文句と一緒に入ってきたのは紛れも無く俺の妹。制服姿のまま軽く息を切らしてる

そんなに食べたかったことや慌てていたことを察して不思議な気持ちになった


反射的にそっちへ向くとばっちり目が合う


向けられたのは、しまったと焦りが混じりながらも、冷ややかで複雑な眼差しだった



「………」

「……あ、お帰り」


さくら、と呼び掛ける前に手洗いうがいをしてなかったとさっき通ったばかりのドアから出ていく


上げかけた手を静かに下ろして、白飯の上で揺れる湯気を見つめた