授業中であることを気にしながら辺りを見回す
机の前、椅子の足元、まさかのふで箱の中
でも、見つからない
進んでいく授業、埋まっていく黒板、ノートに書き写す量は増えていく
普段は滅多に存在さえ思い出さないシャーペンの頭の消しゴム。今は細くて長いそれに頼るのが良策みたいだ
キャップを外して、失敗した箇所をなぞる
消し心地は正直良くない。消しカスが少ないのはいいけど、小さいから力が入らなくて、跡も残っている
でも、今は文句を言ってもしかたないか……
「消しゴム落としたよ」
聞き慣れてきた浅川の声と同時に視界に入ってきたのは、机の脇に置かれた白い長方形
長さが短くなってケースの後ろが押し込まれている
ほとんどがそうであってもどこか見慣れた消しゴムは自分の物だと確信できた
「あれ、桑井くんのじゃなかった?」
「…あ、うん。俺のだ…ありがとう」
「ふふっ、どういたしまして」
席に戻っていく彼女、通路を挟んだ隣りの席に座った
無くて不便だった消しゴムが戻ってきたことよりも、胸の高鳴りが占拠する
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