「あ、ごめん」
手が当たった、無意識とはいえわざとじゃないから謝った、すぐさま開始される黒板消し
なんてことない
だけど、何かが違う
今更だけどその時、浅川との距離がこんなにも近いと実感したから
離れたところからポニーテールが揺れるのを見ていたのとは違う
驚いただけ、焦っただけ
女子とこんなに近づいたことなんてない、から
強いて言えば俺の席を座られて、荷物を置きたい時に声を掛けていくくらい。体抵は”あいつ来たよ”と友達に指摘される。でも中には、わかっていても教えないで驚かせるという嬉しくないサプライズに持っていくパターンもある。なんて悪趣味な
どちらにしても近距離になって良い思いをしたこともさせたこともない
浅川も、そうだろうな
背が高くて、かっこよくて逞しい、加えて良い香りでもさせてたら好印象だろうけどただし、イケメンに限るの部類がやること、自分は論外だ
−−俺って、浅川に不快な思いをさせてるのかな−−
「おーい席着け、授業始めるぞ」
ちょうど先生が入ってきたのはそんなことを考えていたタイミング
「お、日直の二人お疲れ、手洗ってこい」
軽く制服を払うと先生に言われた通り、廊下へ出て水道に向かう
冷たい外気と水温が心地良いほどに、体は熱を持っていた
特に顔、ほんとは火照りを洗い流せるように洗顔したかった
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