「ただの唇だぜ?弱いな、麻李。」 彼は私と同じ目線までしゃがみこんで口角を上げる。 ただのって… 私にとっては大問題だよ… どうしていいのかもわからず茫然としている私の目の前に差し出される小松くんの手。 他人の力、まして小松くんの手なんて借りたくないけどやむを得ず手を握る。 「わわ…」 でも手を借りてもまだ立ち上がれなくて。 小松くんは 「ったくしょーがねーな…」 と私の両肩を持って引き上げてくれた。 「あり、がと。」 パンパンとスカートの埃を払う。