空と砂と恋の時計




「じゃあ、一度で良いから私の事、敬称抜きで呼んでみてよ」

「ん……じゃあ、百合」

「……ぷっ。やっぱ止めよう。ムズ痒いわ」

「言わせておいてそりゃないですよ」


私を捕まえようとする手をヒラリとかわし、逃げ出す私。


「こっちよ、うふふ」


振り返り、にっこりと笑う私。その言葉に貴志は何か気付いたらしく、


「待て待てあはは」


そんな言葉で追いかけてきた。

ああ、絶対、今の私達は右から見ようと左から見ようと紛れもなくバカップル。

冷静に考えると恥ずかしいけど、別段、嫌じゃないところが嫌だ。

坂道を登りきると、すぐ目の前にはいつもの学校。

もうすぐで追いつく貴志を待っていると突然の風が頬を撫でる。

温かさの混じった優しい春の息吹。その風に私はすぐ目の前にある新しい季節を心待ちするのであった。