ゴトリ、とあたしの手からすべり落ち、床にシミを作るピンクのマニキュア。
「恋・・・」
金縛りのように動かない体。
言葉が出ずただただ晴だけを見つめて逸らせない視線。
すたすたと晴があたしのクラスに入ってきて、
パシッと腕を捕まれ、軽く引きずられながら廊下を歩く。
みんなの視線がイタイ。
あたしがアイドルなら喜ばしいことなんだろうけど。
晴につかまれたところだけが熱い。
どこへ向かっているんだろう。
しばらく女子の声がうるさい廊下を通り
外につながるドアを開け、非常用階段に連れ込まれた。
晴の黄色のカーディガンが眩しい。
ぴたりと立ち止まりあたしに向き直った晴は
辛そうに顔をゆがめながらたずねてきた。
「恋は・・・ブラックを離れて・・・よかったって思ってるのか?」
「晴・・・」
「俺は、とめられるほど・・・お前と仲良くなんかねぇけど・・・やっぱなんか・・・
――――」
「え?いまなんて・・・」
「もういわねぇよ!・・・まぁ、そーゆーことだから・・・強制はしねぇけど、ある程度・・・守ってやるから、戻ってこいよ」
あれだね、
ツンデレってやつだね。
晴ちゃん、あたしまんまと胸キュンさせられちゃったよ

