「わっ!?何やってんの??」


律の部屋の前で途方に暮れてたら、偶然出てきてバッタリ。

ピンポン鳴らそうか、どうしようか、引き返そうか迷ってたのに。


「テラくんが…」

「なに?テラがどうかした?」

「彩乃と部屋に来て、追い出された」

「はぁー??」


律は後頭部をポリポリかきながら、帰る家を失った私を眺めた。


「とりあえず飲み物買いに行くけど、一緒に行くか?そのうち帰ってくるよ」


って、あれ?

全然意識されてない?

普通“まじかよー”とか“ラッキー(!?)”とか思うんじゃないの?

ちょっと古びたホテルの廊下を歩きながら、なんとなく律の様子をうかがう。

でも全然動じる様子もなく。


「柚希は?」

「へっ??何が?」

「何にする?」


ボーっとしてた。

律は自動販売機の前で指をさす。

あぁ、ジュースのこと。


「私はいいよ!」

「そうか?」


缶を開けながら自販機前のベンチに座るから、私も隣に座る。

うーん…どうしよう。


「…ねぇ、テラくんホントに帰ってくるかなぁ?」

「気がすんだら帰ってくるよ」


気がすんだら!?

一瞬いかがわしい映像が頭の中で流れて、あわてて打ち消した。

いや、まさかね??

でも…彩乃ならやりかねないな…


「柚希?」

「はい!?」