「使い古しになっちゃったけど、返すよ、コレ。」

老人は草太の顔を見上げた。

「ん?どうしてじゃ?」

「これを履いてると、この力に頼っちゃうんだよね。決勝までこれたのもスパイクのおかげだしさ。」


老人はまた、ニッコリ微笑んだ。

「少年、それは違うぞ。ここまでこれたのは君たちの力じゃよ。」

「だって試合を決めたのはフリーキックだよ!全部このスパイクが…」

草太が喋っているのを遮るように老人が割り込んだ。
「スパイクの力でフリーキックを決めたのは1回戦の時だけじゃよ。」

「えっ!?」

「実はそれ以降はただのスパイクとなんら変わりのない靴じゃったんじゃよ。」
老人は続けた。

「君はいまいち自信を持てていなかった。力はあるのにもったいないと思ってのう。だから、あのロングシュートも君の力じゃよ。」
草太はあえて聞かなかった。あなたは何者?という質問を。


「最後に問う。サッカーは好きか?」

草太は親指を立て笑いながら答えた。

「もちろん!」


その後、草太は県選抜に選ばれ、県対抗戦で見事にシュートを決めてみせた。

もちろん、得意のフリーキックで。


〜END〜