サトシから連絡先を聞いた高橋は、サトシとの電話を終えるとすぐに電話をかけた、もちろん竹内さんにだ。
携帯電話を通して女性が歌う曲が聞こえる。
着うたというやつだ。高橋がその曲に聞き入っていると、急に曲は止まり、もしもし、と女性の声が聞こえた。
高橋が久しぶりに聞く竹内さんの声に反応できずにいると、もう一度もしもしと彼女が言った。
「あのー、高校時代の同級生の高橋だけど」
高橋が胸の鼓動を強く感じながらそう言うと
「高橋君!久しぶり!元気してる?」
と久々の再会を喜んでいるような明るい声が返ってきて高橋はそれが嬉しかった。
なんせ高校時代に告白しフラれ、それ以来話すことはなかったのだ。急に電話をして迷惑に思われたら…と高橋は不安だった。
竹内さんの明るい声が高橋の不安を拭い去ってくれた。

高橋と竹内さんの会話はそれなりに長く続いた。
20分、いや一時間くらいであったのかもしれない。
高校時代の思い出話から始まり、卒業後のお互いの生活、久しぶりに会話する二人にはそれなりに話題もあった。

僕が高橋から得た竹内さんの情報はこんなものだ。
竹内さんは卒業後、関東にある大学に入学した。
竹内さんには現在お付き合いしている男性がいる。
彼氏がいる、と言わずにお付き合いしている男性がいるという表現は高橋の口から出たものだ。
竹内さんに彼氏がいることがショックだったせいで、そんな古めかしい表現になったのかもしれない。
彼氏がいると聞いて僕もショックだったわけだが。

そして竹内さんは高橋にこんなことも話したらしい。