「なんか変な感じなんだけどさ、時々ふっと見えることがあるんだよね、ほんと時々なんだけどさ。見えるってのとはちょっと違うかな。」

その時、彼は確かにそう言った。
突然そんなことを言うもんだから、僕はてっきり幽霊とかお化けとか、そんなことだと思った。
偶然か、季節もちょうど夏だったし。

僕は夏の休暇を利用して地元に帰省した。
大学に入学して以来、もう三年ほど帰省していなかった。
久しぶりの地元は相変わらずな退屈な街ではあったが、文句は言えない。
ここが僕の故郷なのだ。
もちろん小さな変化はあった。
例えば、高校時代によく通っていたゲームセンターはつぶれて、後にはチェーン店のコンビニが営業していた。
最寄りの駅は新しく改築され、というか、プラットホームと券売機だけを残し駅舎は取り壊されていた。
駅舎跡地は整備されコインパーキングとなっていた。
街は確かに変化していたが、僕にはそれが良い方向性なのかどうか判断できなかった。
とにかく、僕がどう思っていようがこれからも街は変わってゆくのだろう。
変わらないのは退屈さくらいのもんかもしれない。

帰省してから数日間はそんな景色を楽しんでいたのだが、やはり街の退屈さは僕をすっぽり包み込み、僕はうんざりした気分になった。

実家に置いていた高校時代の卒業アルバムを押し入れからみつけたのは、帰省して五日目のことだった。