ついカッとなってしまった。
気がついたとき、僕は両手で彼女の首を絞め、そして彼女を殺してしまった。
彼女の全身から力が抜けきってしまうまで、僕は両手に込めた力を緩めなかった。
彼女が死んだことを確信し両手を離すと、力の抜けた彼女の身体はドスンと大きな音を立て床に転がった。
僕はその場に立ったまま、その物体を眺めた。
...物体。
そう、そこに横たわっているのはもはや持ち主不在の物体のように見えた。
彼女の首には僕の指の痕が、赤くくっきりと残っていた。

「うっさいなぁ。だいたいあんたが不甲斐ないからこうなるんちゃうの?」

僕たちはそのとき、彼女の部屋で口喧嘩をしていた。
理由は彼女の浮気だった。
僕は彼女の浮気に薄々気づいていた。
だがこれまでその事に関して彼女に問い詰めたこともなければ、責めたりしたこともなかった。
僕は怖かったんだ、それによって彼女から別れを切り出されるのが。
だからずっと黙っていた。
僕は臆病者なのだろう。

その夜、つまり僕が彼女を殺してしまった日の夜のことだ。
彼女の部屋で夕食を済ませた後、僕らはテレビを見ながらのんびりしていた。