浩平は再び窓の外を眺めた。
グラウンドにはさきほどよりも生徒が増えていた。
30人くらいだろうか...先生がまだ来ていないようで生徒たちは仲良しグループに分かれてしゃべっているようだった。
彼らが何を話しているのかはもちろん分からないが、話し声は浩平の教室にも届いていた。
見る限り、一人ぼっちで立ち尽くしている生徒はいないようだった。

空を見上げると、青々とした一面に真っ白な雲が幾つも浮かび、雲たちは風に運ばれ流されていた。
どこまで流されるのか知らないが、特に興味があるわけでもなかった。
ただ浩平はそんな流されていく雲をじっと眺めていた。
そのゆったりとした雲の運ばれ方に、どことなく優しさを感じた。

「浩平!」

また智美の声だ。振り返るとさっきと同じ場所に智美が立っていた。

「ありがとう!プリント机の上においとくね!」

智美は笑顔でそう言い終えると自分の机に戻っていった。
浩平は胸の奥に違和感を覚えた。
...なんだろう?ギュッと軽く締め付けられるような、ズキッと優しく刺されるような...そんな感じだった。

ふと教室の掛け時計を見た。
もうすぐチャイムの鳴る時間だ。
またあの色褪せたグレージャケットの授業か...ため息をついて浩平も自分の机に戻った。

教室の外、そのずっと上空では、真っ白な雲が相変わらず風に流されどこかに向かおうとしていた。