浩平と智美は小学校からの知り合いだった。
中学校も同じで、二年生と三年生の頃はクラスも同じだった。
どんな経緯で親しくなったのか浩平は忘れてしまった。
きっと共通の話題か何かあったのだろうと思う。
今年、その中学校からこの高校に入学したのは浩平と智美の二人だけだったし、そもそも受験したのも二人だけだった。
なかなかに偏差値の高い進学校なのだ。

教室内を見渡せば、顔に『真面目です!』という札を糊で張り付けたようなクラスメイトがたくさんいる。

高校に入学した四月、教室に入り互いの姿を見つけたとき浩平と智美は、また同じクラスかよ、などと、さも嫌そうに言い合った。
でもお互いにそうは思っていなかった。二人きりの同じ中学出身者として内心お互いにほっとしていた。

「数学の課題プリントならカバンの中のファイルに入ってるよ。」

そう智美に伝え、それから付け加えた。

「写してもいいけど、今度ジュースおごれよな!」

「ほんと助かる!ありがとう!ジュースおごるよ!」

智美は笑顔でそう答え、浩平の机へ行きカバンの中を漁って目当てのプリントを見つけた。
それを見ていた浩平へに向かってプリントを持ち上げ、見つけたよと無言のアピールをした後、自分の机に戻っていった。