妻に頼まれ、僕は今こうしてコンビニへ向かって歩いている。
もし僕がここでずっと足を止めてしまったら一体どうなるだろう?
そんな考えが頭に浮かび、僕は立ち止まった。
きっと帰りが遅いことで妻は僕を心配するだろう。
あるいは、料理が出来上がらないと怒るかもしれない。
それが僕の出した答えだ。

でも仕方がないんだ。
僕にはどうすることもできない。

もう僕の体は「動く」ということを忘れてしまった。
頭の中でいくら、動け、と命令しても僕の両足は言うことをきいてくれない。

右手で開いた傘を持ったまま、僕はまるでしっかりと地中に根をはった木のように立っていた。
路の真ん中で、傘に当たる小雨の音を聴きながら。