あの頃から随分と時間が経った今でさえ、僕はあの時以上の輝きを目にしたことはない。
少なくとも僕の覚えている範囲内では。

そんなミートソース大好きな僕ではあったが、スーパーの自動ドアをくぐり抜け、母の手を振りほどいて真っ先に向かうのは...お菓子コーナーだった。
さすがお子さまだ。
ミートソースはどこに行った?

僕は悪びれた様子もなく平然とそうやってミートソースへの裏切り行為を遂行した。
そしてお気に入りのお菓子を両手に持ち、買い物かごを持った母を探してまわる。
これは幼い僕にとってはちょっとした旅だった。
周りには知らない大きな大人たちがいて、それが僕を不安にさせた。

そういえば...子供がお母さんを探して旅をする話をテレビで見たことがある。
それが母をたずねて三千里であることに子供の僕が気づく。

マルコもこんな気持ちだったのかなぁ...?
とその時の僕は考えていた。

どう考えてもスケールの規模に大きな違いがある。

幼い僕のちょっとした旅は、これといった障害もなく、終わりはすぐに訪れる。
いつもそうだった。
僕が母を見つけるより早く、母が僕を見つけてしまうのだから。