ユウタは、缶ビールとつまみの入ったコンビニのビニール袋を右手に持ち、聞こえてくる音に集中しながら、足を駅の方へと進めた。
駅が近づくにつれ、音は少しずつ大きくなり、それがアコースティックギターの音と男性の歌う声であることがはっきりした。
ユウタはその音を耳に感じながら、駅へと通じる歩道橋を一段ずつ上がっていった。
歩道橋の一番上に立つと、ユウタはそこから周りを見渡した。
歩道橋の上からは色んなものが見えた。
夜中の街は多くの街灯やネオンで明るく照らされ、歩道橋の下を走り抜けていく車の数は決して少なくはなかった。

見上げると、空は黒く、星はそこでは輝いていなかった。
真っ黒な空はすべてをそこに吸収しようとしているかのように思えた。

光と...闇。

街灯やネオンで照らされた街の明るさは、夜の闇に無謀にも抵抗しているようにも思えた。
果たして、どちらが勝利をおさめるのか。

ユウタはゆっくりと深呼吸し、歩道橋を下る階段へと向かった