その独特な響きゆえ、なかなか頭から離れず忘れられない言葉というものがきっとみなさんにもあると思う。

僕にもそんな忘れられない言葉があるのだが、それが『ホロホロらーめん』だ。
中華料理店に行く度に、また中華料理店を見る度に、僕の頭にはこの言葉が浮かんでくる。

あれは数年前の寒い季節だった。
何月だったか忘れてしまったが、とにかく寒い季節で僕はカーキのミリタリージャケットを着ていた。
その時、僕の彼女は入院していてお見舞いのために僕はその病院へ何度も訪れていた。
彼女が入院していたのは…そうだ二年前だ。
まだ二年しか経っていないのか。

そしてその病院で彼に出会った。
彼の名前を聞いた記憶はあるのだが、忘れてしまった。
彼は彼女と同じように、その病院に入院している患者で、松葉杖をついており、足は立派なギプスで固定されていたのを覚えている。
まだ10代の若さ溢れる男の子だった。

そして当時、僕もまた同じく10代だった。

そんな僕たちは病院の待合室でちょくちょく顔を合わせ、そのうち軽く挨拶を交わすようになり、そして親しくなっていった。
病院の待合室を見渡すと年寄りばかりで、僕らは互いに話し相手が欲しかったのだ。
病院での待ち時間は大抵長く退屈なものであり、入院生活というのもまた退屈なものなのだ。

そのようにして仲良くなった僕らは、彼女が検査をうけている間によく待合室で話すようになった。

あの時も僕らはいつものように、病院の待合室で話をしていた。