数日間降り続いた雨は、停止ボタンを押した工場のベルトコンベアのように、何の前触れもなく突然、止んだ。

あまりにも瞬間的な出来事だった。

最初から線を引かれていて、雨が止むことが決まっていたかのようだった。
俺は【ここで雨は止む。】と書かれた台本を手にメガホンで叫ぶ映画監督の姿を探した。
が、もちろんここにはそんな映画監督の姿はないし、撮影クルーの姿もない。
辺りを見渡した。
視界に入るのは...見慣れた街の、見飽きた交差点だ。
右手側にガキの頃よく通った駄菓子屋がある。
そして左手側には古ぼけた本屋がある。
古本屋ではない、゛古ぼけた゛本屋だ。

信号は規則的に青から黄色へ、そして赤へと点滅を繰り返す。

俺はもう20年間もこの街で生きてきた。

成長するにつれて、俺の通う学校は変わった。
小学校、中学校、高校と...。
だがこの場所を通ることに変わりはなかった。

ただ一つ...俺の視点は少しずつ変化した。
身長が伸びたからだ。

それ以外に変化はない。

この場所は俺に嫌がらせをするかのように無表情で、俺をこの街から追い出そうとする。
或いは、俺により大きな世界に飛び出せと言うように。