サトシは車内の時計をみた。
デジタル表示の時計が2:32を示している。

約二時間前に日付が変わった。
その新しい日付は、二人が付き合い始めた日と同じだった。
今日はサトシとユキの交際記念日なのだ。

「もう付き合って三年か…、早いもんだな。」

隣で眠っている女性はその声に反応しない。
女性の目はしっかりと閉じられ、何かに守られているんだという確信を得ているかのような、穏やかな寝顔だった。
サトシとユキは三年前のこの日に付き合い始め、そしてその一年後くらいから同棲を始めた。
築15年程の決して綺麗とは言えない三階建てのアパート。
その201号室で二人は一緒に暮らしている。
立地条件は悪くなく、すぐ近くには駅もあり、コンビニもある。
そこが気に入って契約したのだ。

二人が同棲を始めるとき、予想に反して互いの両親は口うるさく反対はしなかった。
それがサトシにはちょっと不思議に感じたのを覚えている。
てっきりユキの両親に大反対されると思っていたから…。

そんなことを懐かしく思い出しながら、サトシはハンドルを握る手に力を入れた。

山道はより狭くなり、蛇のように体をくねらせ、サトシ達の乗った車を山頂へと導いていた。