その時、ユキはサトシと二人でドライブ中だった。
運転しているのはサトシだ。

深夜二時の人里離れた山道を走る車は他になく、対向車と出くわすこともなかった。
サトシはハイビームを保ったまま、車を目的地へと走らせていた。

「ねぇねぇ、あとどれくらいかかるのかなぁ?眠くなってきちゃった。」

ホント眠いんだろうなぁ…ユキのやつ。
サトシはそう思った。

二人が同棲を始めてから二年が経っていた。
二年も一緒に暮らしていると、さすがに相手に対しての理解は深まる。
ユキは眠くなると、猫が寄ってきて頭を擦り付けてくるような甘えた声を出す。

「着いたら起こしてやるから、ちょっと寝てなよ。」

「えー、やだよぉ、せっかくのドライブなのに。」

女心って分からない。
眠いなら寝たらいいのに。
寝たいんだか、起きていたいんだか…。

深夜の山道はあまりにも暗く、もちろんこんな寂しい道には明るく照らしてくれる街灯もない。

そんな真っ暗な中、サトシの車のヘッドライトだけが車道を明るく照らす。
車道は時折、未舗装の部分があり、そんな砂利道を通るとき車は少し上下に揺れた。

サトシは静かになったなぁと思い、隣のユキを見た。

…寝てる。
ぐっすり寝ている。

起きとくんじゃなかったのかよ!

サトシはまたすぐに視線を前方に戻し、ヘッドライトが照らす車道を見ながら必要に応じてハンドルをきった。