聞き慣れた着信音が部屋に響く。
彼氏からの電話だ。
何度も聞いたそのメロディは既にお気に入りになっている。

ミサキはこのメロディをずっと待っていた。
しばらくメロディに耳を傾けた後、ミサキは携帯電話を取り、受話ボタンを押した。

「もしもし!ねえ、今どこなの?」

そう切り出すミサキに驚いたのか、電波の向こうにいるはずの相手は黙っていた。
ミサキがもう一度、もしもし、と言おうとした時、ミサキの耳に聞いたこともない男の声が聞こえてきた。
待ち望んでいた彼氏の声ではなく。

「…明日は…雨が…降るよ…。」

「はい?あのぉ…どちらさまでしょうか?」

その質問に電波の向こうの相手が答えることはなく、そのまま通話は終了した。
ミサキの耳にツーツーという音が聞こえた。

「…な、何なの?いたずら電話?ってか明日は雨が降るよって何よ!?」

いたずら電話を受けたのは初めてではなかったが、こんな奇妙な電話は初めてだった。
何より、なぜ、彼氏からの着信専用メロディが鳴ったのだろう…?
不思議に思ったミサキは着信履歴を確認した。

そこには【通知不可能】と表示されていた。

「通知不可能…。」
ミサキは表示された文字を声に出して読んでみた。
その言葉の響きにはどことなく、不吉なものが含まれているような感じがした。