僕はその小さな島を歩いて一周してみた。
時計を確認すると、外周を歩くのに約30分といったところだろうか。
もし時間の流れ方が僕の知っているものと同じならば。
これだけおかしな事が続いているのだから、時間の流れまでおかしくなっている可能性はある。

島を一周する間、途中で古ぼけた立て札を見つけた。木で作られたものだった。
そこには黒いペンキのようなもので、"Happy*Island"という文字が書かれていた。
文字は幾分薄くなっており、この立て札が作られて長い時間が経過していることが分かった。

「ハッピーアイランド…。」
と声に出してみた。

この状況がハッピーなものであるとは僕には思えなかったが、ここはハッピーアイランドであるらしい。

僕は再びバスに戻り、もう一度ポケットから携帯電話を確認した。

時刻は午後一時。
僕が病院へ行くために家を出てから、三時間くらい経っていた。
携帯電話は相変わらず赤い文字で圏外を表示していた。

試しに、リダイヤルからミサキの番号を見つけ発信してみた。

携帯電話の受話口から、聞き慣れたあの失恋を歌った曲が聞こえてきた。