高橋が話を続ける。
「今入ってきた男の子はな、何でかは知らないがカフェイン剤を愛用してんだよ。理由まではさすがに見えないな。超能力とは違うみたいだわ」
「いやいや、十分超能力だろ!」
僕がそう言うと高橋は、そうかもな、と笑った。
それにな、と高橋は続ける。
「今もな、見えてるんだよな、景色が」
「知ってるよ」それだけを答えた。
僕はさきほどからずっと高橋の眼を見ていた。
そして彼の右目、その黒い瞳に魚眼レンズで撮られた被写体のように写るソレを見ていた。
それは僕の幼い頃の思い出であり、途中からは懐かしい景色へと変わった。

そのあとも何かを話したんだろうけど、残念ながらそれについては覚えていない。