ハッピーエンド

リードを引く主人よりも前に出て、逆に主人のことを引っ張っている。



これじゃあどちらが散歩をされているのか分からない。



けれどここは坂だから、下手に止まれないのだろう。



転がるようにして坂を下りてくる。



近づいてくる犬は割りと小さい。



僕は犬に詳しくないから犬種は分からない。



舌を出し、息を荒くして僕の横を通り過ぎる。



リードの先には女の子。



あ。



僕は駆け抜けていく彼らを振り返る。



あっという間に坂を下りて、暗闇に紛れてしまった。



けれど僕ははっきりと見た。



犬を連れていた女の子。



それは僕があこがれていた彼女。



生徒会の高梨 美和子だった。